俺の幼馴染は、とんでもない奴だ。


男っぽくて、
口が悪くて、
そのくせに無駄にモテる。

性格は、俺以外にはいい。
顔は中の……上?
…なんて言ったら絶対ハイキックが飛んできそうだ。


「……何でだよ。」
「……知るかよ。」


隣で同じように掲示板を睨みつけながら、
ドスの利いた低い声を発する俺たち。

周囲の生徒たちは、喜んだり悲しんだり
とても忙しそうに歩きまわっている。
そんな中、俺たちだけは先ほどからずっと
この場所に佇んでいた。


「…バッカじゃん。」
「…何で俺が馬鹿なんだよ。」
「だって!」


半分泣きそうになった目が、
俺を睨みつける。

昔に比べて身長差も出てきて、最近では
彼女の方が俺を見上げる形になってきた。


だから今の彼女は自然と、
潤んだ瞳で上目遣いになるわけで
必死に俺の中の理性を総動員させる。


「一体あたしらは何年一緒なんだ!!!」


突然叫んだ少女に、周りの視線が一気に集まる。
俺は思わず身を縮めたが、
彼女は何も気にしていないようだ。


今、彼女の関心は完全に
この目の前の掲示板に向いていた。


「えーっと……小1、からか?」
「そうだよ馬鹿っ!」
「馬鹿言うな!!」


俺――宮塚仁(ミヤツカ ジン)と、
この最凶幼馴染の少女――光原永遠子(ミツハラ トワコ)は
小学1年生から現在の中学3年生までの、9年間。

ずっと同じクラスという記録を更新している。


「何でなんだー!!絶対嫌がらせだろ、なぁ?!」
「知らねぇよ。」
「絶対先生達も楽しんでんだよ、
 あたしらの反応をさ~~!!」


そう叫んで、大袈裟に頭を抱えた永遠子に
俺は軽く聞こえないように舌打ちした。

しかし、聞こえてしまったのか
彼女は恨めしそうな瞳で俺をまた睨みつけた。


おい。何で、俺こんな損な役回りなわけよ。