トイレの鏡に向かい、ポケットから出したリップを唇に滑らせる。

すると、反対のポケットで携帯が震えた。


「はい」

『あ、絵里ちゃん?今どこにいるの?』


電話の相手はママだった。


「マリとカラオケだけど」

『今日何時ごろ帰る?』

「あー…帰らないかも」

『絵里ちゃん一応女の子なんだから、気をつけてよ』


私とママは特別仲が良いわけではないが、悪いわけでもない。

基本放任だから、別に何でもいいんだけどね。

ママと電話を切った私は携帯をポケットに突っ込み、トイレを出た。

そして部屋まで行く廊下の曲がり角で、私の顔面に衝撃が走る。



ドンっ!