「この前の試験結果の成績表を配ります、名前を呼ばれた者から取りに来なさい」


シンと静まり返る教室。

皆、まだ慣れきっていない、若い男の担任との関係はぎこちない。

そんな中で、今日は高校に入って初めての実力テスト…の結果発表。


「白雪!」

「は、はいっ」


ぼうっとしていた私は、返事なんかしなくてもいいのに、妙に裏返ったような声を出してしまった。

当然、周りからは小さな笑いが聞こえてくる…。


「返事はいいな、でも結果がコレじゃあ…」

「………?」


席を立ち、教壇の前まで恐る恐ると歩み寄る。

担任の先生は、明らかに残念そうな哀れみの表情を浮かべ、極めつけに小さくため息を吐いた。


「あ、あの…そんなあからさまに残念な顔をされると……け、けっこう悪い結果なんですか…ね?」


「"けっこう悪い"?……いやいや、白雪お前、点数が全部真っ赤だ」



……全部真っ赤?

つまり、それは─"全教科赤点"ってこと!?


先生はその成績表を私に渡す前に、とんでもない行動に出た。

…教室の中央に向け、高らかに私の成績表を掲げた。


「ぇ゙……」


2、3秒の間の直後に、今まで静かだった室内がもの凄い爆笑に埋められた。

私と同じような大人しそうな生徒でさえ、笑いを堪えるのに必死のよう。



その瞬間、私の頭の中は、いわゆる真っ白になってしまった…。



ああ、でもこれで先生とクラスの雰囲気は和んだはず。

平和に犠牲はつきもの的な…。