玲が屋敷の扉を開くと、
吹き抜けになったシャンデリアの
下に女を抱き寄せる
男の姿があった。

こちらに背を向けた男が
物音に動きを止める。
無表情のまま立っている女と
目があった。

一目見てすぐ分かる。

血を吸われた女だと。

玲は思わず顔をしかめた。

血を吸うことは自分の印を
つけることと同じだ。

印をつければ相手を自分の
思い通りにできる。
意のままにすることも、
あえてそのままにすることも。

全ては吸う者、次第。

カァッと頭に血が上る。


「棗はどこだ」

低い声で問いかけると、
背を向けていた男が
ゆっくりと振り返った。