ケータイ小説 野いちご

君の瞳に映る色

9.菖蒲の過去



広い屋敷の廊下に菖蒲の
怒鳴り声が響き渡る。

その声のするドアを影から
伺いながらメイド達は大袈裟に
肩を竦めた。

「今日は一段とすごいわね」

雑巾を片手に一番年長の
泉川が呟く。
ぽっちゃりとした身体に
メイド服がきつそうだ。

「大変なんですよ!
お嬢様がいなくなったって」

20代前半くらいの活発そうな
佐久間が声を潜めて言う。

どういうこと?とみんなすぐに
食いついた。

「東條家のお屋敷から
行方不明になったらしいです」

えぇ!?と驚きながら
みんな顔を寄せる。

何それ!と佐久間に詰め寄った。

誰が言ってたのよ、と
険しい顔になる富谷は目の細い
きつそうな印象だ。

お茶を運んだ隙に
聞いちゃいました、と
佐久間は舌を出して笑う。

「ふーん、でもわかるわね。
あの東條って人感じ悪かったし」

富谷は同情するような
口調で呟く。

「えぇ!すごい美形だったのに」

佐久間は櫂斗の顔を思い
浮かべながらうっとりとした
瞳になった。

「お嬢様、大丈夫でしょうか」
一番年下の伏見が
泣きそうな声を出す。





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