微かな甘い匂いを感じて
棗は眠りから目覚めた。
柊が毎朝持ってくる紅茶の
香りだろうか。

とても穏やかな気分で棗は
目を開けた。

癖のあるブラウンの髪が
閉じた睫毛にかかっている。
穏やかな寝息とそれに合わせて
上下する胸。

今にも触れそうな距離にある
玲の顔に棗は一気に眠気が
吹き飛んだ。

慌てて起き上がると後ろの壁に
頭をぶつけた。

頭を抱えながら記憶を辿る。

ぼんやりとした記憶を
思い出していると、玲が
寝返りをうった。


細いようで筋肉のついた腕を
眺める。

何でこの人は上半身裸なの?
そんな疑問を頭に浮かべながら、
2度目とはいえ見慣れない姿に
恥ずかしさで棗は顔を背ける。


太陽の柔らかい光が部屋に
差し込んでいる。
今何時くらいなんだろう、
そんな事を考えながら
ベッドから降りようとすると
腕を引かれた。

体勢を崩した棗の身体をうまく
抱きとめながら玲は腕に棗を
包み込む。

「おはよ…」

耳元で囁かれて棗はカァッと
身体が熱くなった。