止まない雨は、学校全体に気だるさを与えていた。

 
昨日保健室に置いて帰ったブレザーをどうしようかと思案しながら芹が教室に辿り着くと、どこかいつもと違う雰囲気に包まれている。
 

女子はあちこちで固まって何かをひそひそと話、男子は何かを手に大きな塊を作っている。

 
なんだ……?

 
不思議に思いながら自分の席に鞄を置くと、前の席の男子生徒が話しかけてきた。


「あのさ、皆川はこれどう思う?」
 
そう言うと塊になっていた男子生徒たちが一斉に芹を見つめる。

話しかけてきた男子生徒が持っていたものは雑誌、それもぱっと見成人向け雑誌に見える。
 

そして開いて見せてきたページに写っているのは目に黒帯の入った下着姿の女性。
 
ベッドの上に座っているところを右斜め前から撮っている。


「これがどうかしたか?」
 
一応そう聞いてみたが、芹は頭の中が真っ白になりそうだった。


「いや……保健室の龍野先生に似てねぇ?」
 
男子生徒は薄ら笑いを浮かべてその名を口にする。


「そうか? これぐらいなら似てる人はいくらでもいるんじゃないか」

 
ごく自然に、いつもの自分を振舞うよう芹は努めていた。
 

自分が言っていることは、本音ではない。