「アラナ・・僕は、あの向こう側に行くよ」


バルコニーに立った幼なじみは、いつもの頼りなさ気に揺れる瞳では無く、意志の強い真っ直ぐな瞳で
どこまでも続く シールド を睨んでいる。


今までに彼のそんな表情は見たことがなく、私は戸惑ってしまった。


「ラグには無理よ。ハイランダーに選ばれるには、すごく難しい試験に合格しなきゃならないんでしょ?
それに、あれ を越えたら何があるか分からない。
もしかしたら帰って来れないかも─ だから!」



「それでも僕は行くよ。
行かなきゃならないんだ」



「─どうしても?」

私は、泣きそうになった。


いつも守ってあげなきゃ何も出来かった幼なじみに今日は、私が泣かされるなんて・・
必死に涙が溢れないように堪える。




「どうしても」


そう言ってラグは、後ろに立っている私を振り返り少し微笑んで見せた。


人工太陽の光がラグの金髪に当たり眩しくて思わず目をつむってしまった。


その時、一筋涙が頬をつたって流れた。


「泣かないでよ。なにも今すぐお別れってわけじゃないんだからさ。」


ラグは、驚いたように言う。


「泣いてないわよ!これは、目から汗が出たの!」


「月並みだね。」

ラグは、困ったように笑い私の頬を流れる涙を拭う。


「アラナ、僕は行くよ」

「うっるさいわね!聞いたわよ。さっき!」

何度も言わないでほしい。


─泣いてしまうから


「強くなりたいんだ。もっと。」


「ラグは、強くならなくたって、私が守ってあげるわよ!」


ラグは、小さく首を振り私の手を握った。


「アラナに守られるんじゃなくて、アラナを守りたい。」



「えっ」




「だから、待っていて。絶対強くなって帰えって来るから。そしたら、その時は──────」








「・・様!、お嬢様!いつまで寝ているんですか!起きてください」


蒲団をひっぺがされて、私は夢の世界から引きずりだされた。