4月8日。

朝、食堂に行くと、矢野の姿はもうなかった。


朝と夜、食事は食堂に運ばれてくる。

時間は、朝も夜も7時。

……休みの日にはちょっとつらい朝食になるけど、まぁ、そこは我慢。


時間差ではあったけど、割と毎日矢野とここで顔を合わせていた。

その度になんだかんだからかってくる矢野を少し鬱陶しく感じながらも、不思議と嫌だとは感じなかった。


あたしも早く食べなくちゃ遅刻しちゃうな。

そんな事を思いながら食事に手をつける。

食べ終わった食器を決められた場所に戻して、もう一度自分の部屋に戻って鏡の前に立って……自分の顔を見つめた。


腫れ上がっていた頬はほぼ元に戻っていて、その様子に安心してため息をつく。


叩かれた時に、少しだけ傷付いたみたいで、頬には小さな傷ができてる。

だけど、これくらいなら気付かれる事もなさそうだし。

頬の腫れが治る度にほっとするけど、殴られた事実は消える事なく、あたしの中に積み重なっていく。

重い重い事実が。



あれから……啓太からの連絡はない。