「啓太!」
駅の前で煙草をふかしていた啓太が、ゆっくりと振り向く。
「おせぇよ」
不機嫌そうな表情でそれだけ言うと、あたしを置いて先に歩き始めてしまう。
そんな啓太に悲しくなりつつも、そんな気持ちを振り切るように啓太の後を追う。
啓太は中学の頃からバスケをやっていて、服の上からでも分かるくらいに身体が大きい。
大きいっていうか……鍛えられた筋肉体。
高校が離れてからは会う事が少なくなって、会う度にピアスが増えていた。
今は髪も金髪に近い色に染まっていて。
聞いた話によるとバスケ部も辞めたらしい。
それを本人に確かめる事はしていないけど。
以前一度、バスケの話を出して叩かれたから……それからはなんとなく、その話題を避けていた。
「久しぶりだね」
やっと追いついた啓太を覗きながら言うと、そっけない冷たい視線が、一瞬だけあたしに落ちる。
「そうか?」
「……うん。1ヵ月ぶりくらい」
きゅっと唇を噛みながらも笑顔を作る。
「どこ行くの?」
「ああ、映画? 行きたいっつぅからチケット買ったのに、昨日になってドタキャンされて。今日までだから」