「はぁ……」





 ついに、ついにこの日が来てしまった………。





 机に項垂れていると、ポカンと頭を叩かれる。


 ムッと叩かれた場所を押さえながら顔を上げるとイシシと意地悪そうな笑いを浮かべる悪友であり幼なじみでもある拓斗(たくと)の姿があった。


「何すんのよ!」


「朝からお前が珍しく浮かない顔をしているから元気づかせてやろうと思ってな」





 全く悪びれもしない拓斗にあたしはプイッと顔を背ける。


「何だよ、その態度。
人がせっかく心配してやってんだろ?」





 心配?


 聞き捨てならない一言に、あたしは眉間に皴を寄せながら、拓斗を見る。


「あんたのどこに、あたしを心配している姿があるのよ。
その人を馬鹿にしているような笑みを浮かべているところから信憑性なんて全くないんだけど!」





 ニヤニヤした顔で言っていること事態が面白がっている証拠じゃない!


「まあまあ、そう怒るなって。
ところで、本当にどうしたんだよ。
暗い顔してよ」





 こいつに話すべきか?


 話したところで、大笑いされて終わりのような気がしないでもないけど………。


 第一ね、納得いかないわよ。


 いつも赤点ぎりぎりの拓斗が家庭教師つけられるならわかるけど、常に五十番以内をキープしているあたしがたった一つ順位が下がっただけで家庭教師を付けられるっていう現状に。