「は!?」





 突然、
『話があるから家に戻って来い!』

なんていう電話があったから、なんとなく嫌な予感はしてたんだ。


 だけど、まさかこんな話だなんて思ってもみなかった。





 俺はなぜか気前よくケーキとコーヒーを用意してくれていた、そのコーヒーのカップを宙に浮かせたまま、母をじっと見る。


「だから、茅乃ちゃんの家庭教師をしてあげて欲しいのよ」


「茅乃?」


「ほらっ、初瀬(はつせ)さん家の一人娘の茅乃ちゃん。
あんた、昔よく遊んであげてたでしょ?」





 初瀬茅乃。


 確かにその名前には聞き覚えはある。





『うわ~ん、圭くんのバカ~!』





 思いっきりぞんざいに扱って、挙句に泣かせた記憶が………。





 一番に初瀬茅乃という名前を聞いて浮かんだのは、思いっきり泣いている茅乃の泣き顔だった。





 遊んであげたとか母さんは言ってたけど、遊んであげた記憶なんて全くないけどな………。


「ところでさ、なんで俺が茅乃の家庭教師をするとかいう話になってんだよ」


「あらっ、いいじゃない。あんた頭だけはいいんだから」





 頭だけって………。


 あのな、口に出しては言わないが、俺はこれでも一応モテてるほうの部類に入ってるほうだぞ。


 それを………