その日の授業も、いつも通り退屈だった。


だから俺は、いつものように机の中にあるラジオをカチリとつける。



『……ザ…ザザ……

12月23日19時2分42秒。

黒澤遥さんのニュースをお知らせします。

下校途中、横断歩道で信号無視の車にはねられ重体。

犯人は只今も逃走中とのことです。

……ザザ……ザ……』





「は?」


俺は授業中だということも忘れ、思わず口から疑問符が飛び出した。


「持田、どうした?」


英語の教師が眉間に皺を寄せながら、俺の顔を見る。


教室にいる皆の視線が俺に集まった。


……。


俺はラジオのスイッチをそっと切り、深呼吸をした。


身体中に冷たい汗が浮かぶのを感じる。


「顔、真っ青だぞ」


「だ、大丈夫です」


「保健室行ってこい」


「……はい」


俺はラジオをポケットに忍ばせ、皆の視線を浴びながら教室を出た。