「あそこは別宅だと言っていたが」
落ち着いたところでアレウスが問いかけた。その声色は、別宅であれだけのセキュリティは必要なのかと言いたげだ。
「カイルの滞在用にと用意したものだ」
「誰ですの?」
「私の師だよ」
「師匠? 傭兵のか」
「そうだ」
「わざわざ師匠のために? 立派だな」
「気兼ねなく過ごせる場所を提供しただけだ」
武器も置いてあるため、セキュリティを強化している。
「それで。そのお師匠さまはいま、どうされているのです」
「聞きたいのか」
「はい」
どうしてそんな事を聞きたがるのかと顔をしかめる。
「引退してのんびり暮らしているよ」
「引退? 怪我でもしたのか」
「船でハイジャックグループに一人で対応したそうだ」
アレウスはそれに眉を寄せた。対応と緩い口調で言っているがそれはつまり、複数を相手に一人で闘ったということだろう。