チヒロが急に見舞いに来た。
相変わらずやることが唐突だな、親友よ。
そして殴られた。
相変わらず暴力的だな、わが親友よ。
それから泣き出した。
相変わらず涙もろいな、わが親友よ。
「何でこんなに早くお前が死ぬんや」
とか言っていたので
「美人薄命っちゅうことやな」
と言ったら泣き笑いしていた。
それから長く話をした。
雨は、好きな人ができたらしい。
それを聞いた時、すごく複雑だった。
悔しかった。
引き止めておけなかった自分が憎かった。
可能ならば奪い去りたいと思った。
俺がいなくても、雨は大丈夫。
そう認識すると、安心すると同時に
たまらなく寂しく、哀しくなった。
チヒロによれば、雨はおれに裏切られた
と言っていたらしい。
憎んでいるだろうか?
でも、おれを憎んで他の男に恋をすれば
おれがいなくなっても雨は悲しまなくて済む。
それは雨にとって幸せなことだと思う。
わざわざ来てくれたチヒロにも感謝している。
喧嘩も多くしたが、こんなおれと飽きずに
友達でいてくれた。物好きな男だ。
ありがとう、チヒロ
でも殴られるのは痛いよ
2006.12.15 愛の拳?