そこに立花さんが「島田さっきはありがとう」


「上司として、頼もしいことを言ってくれて、鈴木さんも喜んでいると思うよ」

島田が私の顔を見て、「そうか。高島上司にはきちんと言っておくから」


食堂にいた他の社員が食堂を離れて行く姿を見て、「休憩時間も終わりだし、綾野。立花。仕事だ仕事」


「作業場に戻るぞぉ〜」とふたりを引き連れて、作業場に戻って行った。


灰色の空から降る無数の澄んだ滴の中に、一粒の命を宿した滴が水たまりにポッと落ちた。


人影途絶えた道には、命を宿した滴が落ちた一つの水たまりがそこにはあった。

その水たまりの中で、人間には聞こえない産声が泣き響いていた。


私の名前はアイリ。水たまりの中で生まれた。


滴の殻を破り、ゼリー状の体の姿で自在に体を変形しながら、私は泣いていた。

水にとけ込むと人間の目では見えない姿で、泣きながら、またひとりと水たまりを避けて、傘をさしながら横切る人間を水たまりの中から私は見つめていた。


時間は夕方の3時頃だった。


仕事中に私は作業しながら、まだ島田が高島に私や鈴木さんがお願いしていることを言ってくれなくて、部品取り付け作業をしながら、私は島田をチラチラ見つめていた。


俺は離れた場所から視線を感じた。


振り向いたら、立花が睨む表情で離れた作業場から俺の顔を見ていた。


高島に「言ってやれ。言ってやれ」と顔で合図を送ってきて、俺は思いだした。

「あぁそうだ部下たちからお願いごとがあったんだ」とふと思いだした。


俺の隣で厳しい顔をして作業している。高島に部下たちから頼まれている話しを持ち出した。