「ケーゴぉお」

「なんですか、ミカ先輩」


図書館の隅っこ2つの席、
窓からを通った日差しが
一番温かい場所。

アタシは後輩の男子の名前を呼んだ。

アタシが名前を呼んでも、
彼の視線は本のもの。

「ケーゴぉ」

「だからなんですか、先輩」

わざとらしくつけられた先輩。

相変わらず視線は本。

声は落ち着いている。

彼がつけている黒斑の眼鏡を
アタシは奪おうと手を伸ばす。

「やめてくださいって」

見向きもせずにそう言って、
私の手を退けて
眼鏡をカチッ、と掛け直す。


「チョー萌えなんだけど」

ついキュンキュンして、
アタシはそう言った。

――眼鏡とか、良い!

「意味がわかりません」

「わかってるくせにぃ。つかクール良いっ。ツンデレに期待したいなぁ」

アタシは笑いながら
彼の顔を覗き込む。