「あぁ……」

おばあさんは残念な気持
になった。

すると、先ほどのキジが
庭の真ん中に舞い降りた。

おばあさんは、今度こそ
おじいさんを起こそうと
思った。

でも、動いたら逃げてし
まうかも知れない。

おばあさんが、またして
も迷っていると、後ろ向
きに舞い降りたキジが向
きを変えておばあさんの
方へピョコピョコと跳ん
でくる。

口には、さっき採ったば
かりの濃い緑色のキンカ
ンをくわえていた。

おばあさんは、口をポカ
ンと開けてキジの様子を
見ていた。

キジはどんどんと近づい
て来て、おばあさんの目
の前で止まった。

おばあさんは何も言えず、
動く事もできなかった。

それでもキジはおばあさ
んの傍を離れようとしな
い。

小さな小さな目でおばあ
さんを見ている。

おばあさんは、ふと思い
ついて手をさしのべてみ
た。

それを待っていたかのよ
うに、キジがおばあさん
の手の平にキンカンを乗
せる。

おばあさんは訳がわから
ないまま何度か頷いた。

目的を果たしたキジは、
向きを変えてピョコピョ
コと少し跳ねてから大空
へ舞い上がった。