夜中、不意に目が覚めた。
何気なく暖かなベッドからひやりとした床に降り立ち、そのまま窓際へ歩いて。
カーテンを開けた先に広がるのは墨をぶちまけたような空と、薄くヴェールを広げた雲、そして輝く星の姿。
思わずそのまま、窓を開けてバルコニーに出る。
触れた外気に無意識にふるりと震えた肩を擦りながら見上げた先は、空気が澄んでいるからだろう、薄い雲の衣を纏っていても垣間見える星は美しかった。
「…綺麗だ…」
呟きに乗せて零れた吐息はその姿を霞へと変え、次第に四散し空に紛れて消えていく。
それをぼんやりと見つめる目に、周りに比べ一際明るい星が映った。
南向きに作られたバルコニーから見える、輝く星の名前に記憶を巡らせる。
「…ああ…シリウス、だ…」
呟く度に、吐息がもやに変わり消えていく。
その時、ふわりと。
輝く星たちに紛れるように、小さな何かが舞い降り始めた。
思わず差し出した手のひらにそれは降り立ち、しかしその感触を感じる間もなく温もりに消えた。
途端に背中からぞくりと這い上がる感覚に、外の空気の変化を知る。
どうりで、吐き出す息が生み出すもやがどんどん濃くなる筈だ。
「…風邪引く前に、もう一眠りしようかな」
空からは、まるで羽根のようにふわりふわりと数多の清らかな真綿が舞い降りていて。
けれどそれは見上げると何故か、空へと昇っていくような錯覚を覚えた。
口角を緩く引き上げ部屋へと戻ると、まだ微かに己の温もりを残すベッドへと身を収めて掛け布団を鼻先まで引き上げる。
きっと明日は、普段よりも静かな朝が迎えられる。
街もすっかりと姿を変え、まるで教会で誓いを立てる花嫁のような清らかさを纏っているだろう。
朝日にキラキラと輝くその様を思い描きながら目を閉じれば、ゆっくりと再びの眠り淵へと、意識はたゆたい始めた。
何気なく暖かなベッドからひやりとした床に降り立ち、そのまま窓際へ歩いて。
カーテンを開けた先に広がるのは墨をぶちまけたような空と、薄くヴェールを広げた雲、そして輝く星の姿。
思わずそのまま、窓を開けてバルコニーに出る。
触れた外気に無意識にふるりと震えた肩を擦りながら見上げた先は、空気が澄んでいるからだろう、薄い雲の衣を纏っていても垣間見える星は美しかった。
「…綺麗だ…」
呟きに乗せて零れた吐息はその姿を霞へと変え、次第に四散し空に紛れて消えていく。
それをぼんやりと見つめる目に、周りに比べ一際明るい星が映った。
南向きに作られたバルコニーから見える、輝く星の名前に記憶を巡らせる。
「…ああ…シリウス、だ…」
呟く度に、吐息がもやに変わり消えていく。
その時、ふわりと。
輝く星たちに紛れるように、小さな何かが舞い降り始めた。
思わず差し出した手のひらにそれは降り立ち、しかしその感触を感じる間もなく温もりに消えた。
途端に背中からぞくりと這い上がる感覚に、外の空気の変化を知る。
どうりで、吐き出す息が生み出すもやがどんどん濃くなる筈だ。
「…風邪引く前に、もう一眠りしようかな」
空からは、まるで羽根のようにふわりふわりと数多の清らかな真綿が舞い降りていて。
けれどそれは見上げると何故か、空へと昇っていくような錯覚を覚えた。
口角を緩く引き上げ部屋へと戻ると、まだ微かに己の温もりを残すベッドへと身を収めて掛け布団を鼻先まで引き上げる。
きっと明日は、普段よりも静かな朝が迎えられる。
街もすっかりと姿を変え、まるで教会で誓いを立てる花嫁のような清らかさを纏っているだろう。
朝日にキラキラと輝くその様を思い描きながら目を閉じれば、ゆっくりと再びの眠り淵へと、意識はたゆたい始めた。