キィィィーーーーーン

うっそうとした森の中、甲高い金属音が闇に響いた。
そのすぐ後、風が走り草木が一瞬、

―――ざわ

と揺れる。


そこには黒い影の姿がぼんやりあった。

息は切れていないが、肩で呼吸をしている。
顔半分程、布におおわれ表情は読めないが、影は若い。
青年の体躯だった。

短い黒髪が露にぬれ月明りの下、漆黒に線を浮び上がらせる。
棒状手裏剣を指間に挟み、一点を見つめていた。

見つめる先には何も無い。
いや、
闇に溶け込んでいるが、たしかに何かいる。

影の腕に、くっと力が入った。
そして…


―――静寂


影と何者かは消え、異様な程の静けさに包まれる。

―――バサバサ

山バトが飛立つ音が響き、すぅと先の影が現れた。

眼の下に、先程まではなかった色の付いた液体が鈍く光る。
腕には逆刃で忍刀を携えていた。

ふいに顔を上げる。
懐から黒い何かを取り出し、開いた。

「………六(ロク)」

しばらくの沈黙の後、

「承知」

閉じて、再度しまう。
刀を捨て、闇に消えた。



後には何者かの骸と、黒く鈍色に光りを放つ、刀が残された。