「可能性……か」

 ホテルの一室のさびれた窓枠にグデ~っと肘を突きながら、眠そうな眼でヒカリが言った。

「ん? 何? なんの話?」
 グダグダにだらけたヒカリの頭にのしっと腕を置いて、ノって来たのは相棒のネイア。

「ん~…アレ、さぁ」
 指差した先には広場で、本を片手に地面に何やら書いている少女の姿が。

「あ~ミク」

「ん~。ちょっと前まで泣いてばっかだったのによ、今じゃぁ…」
 すっと立上がったミクは、手をその模様のような絵の上にかざす。
 それから何かを呟いて…

 円を描いた模様がすぅと光を放ち、虚空から何かが集約され形成された。

 それは、人の形をした獣の耳と尻尾を持つ物。

「あ~あ、もうガーディアン呼びやがった」

 ヒカリのなんとも言えない顔を見て、くすっとネイアが笑う。

「なんだよ~」

「そうゆうものよ、子供は。まして、あなたの子なんだから」

 ぶすっとしたヒカリが可愛くて、また笑いが込上げてくる。
 ネイアの小さな耳と尻尾が揺れる。

 小さく溜息を吐いて、
「でも、まぁあれだな……可能性の浸透圧?」

「何? それ」

「ん? 俺等と四六時中いりゃぁ、染込むってな」

「ふふっ、それもそうね」