1570年、元亀元年。6月28日
遂に訪れてしまった"明日"。姉川に出陣した父と由親の無事を祈ることしかできない千与は、きゅっと下唇を噛んだ。

一体いつになればこの日ノ本に平穏が訪れるのか。
そんな莫大な不安がその小さな身体を支配した。

千与はロザリオを握りしめ、神に祈りを捧げた。それしかできなかった。

―神よ、どうか父上と由親をお守り下さいませ。

―神よ、どうかどうか…

「アーメン」

今頃、信長様率いる軍は近江の姉川で戦っておられるのでしょう。どうか無事勝利をその掌中に…。