ケータイ小説 野いちご

偏愛ワルツ






彼女は、狙っているんだろうか。

僕は帰宅部だ。だから、夕方まで学校に残っていることは少ない。なぜなら家に帰りさえすれば、僕の天使がいるのだから。

僕はクラスで雑務を任されることが多い。プリントの集計や、テストの丸付けまで頼まれることがある。だれにって、先生にだ。どうやらそういう役回りらしい。よく言えば人がいい、悪く言えば断れない。そんな僕だ。

彼女は、狙っているんだろうか。

いや、狙っているんだろう。僕の帰りがいつもより遅くなるのを嗅ぎ付けて、待っている。

望んでなんていないのに、僕と彼女はこないだ同様、日暮れ間近の教室に二人きりだった。

プリントの集計を終えて教室に戻ったら、彼女が僕の席に座っていて、「ハッロ~」と手を振ってくるのだから、まったく苦笑しか出てこない。ひょっとして、これも役回りなのだろうか。

冗談じゃなかった。こればかりはたとえ先生に指示されたとしても、願い下げ立った。

さっさと僕の天使に逢いたいので、彼女と会話することは予定に組んでいない。

とっとと帰ろうと思う。だから彼女の「ハッロ~」は無視した。机の横にかけてある鞄を手に出した瞬間、にゅっと彼女も手を出してきた。また袖を掴まれる。

「無視するの? いいね。そういうとこ、むしろ好みかも」

「ゆがんでるんだね」

「あらそう? 自分の好きなものをはっきり好きって言ってるんだから、とても素直だと思うけど?」

「自分で言っちゃしようもないよ」


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