私は天使だった。羽も、金色に輝く輪もなかったけれど、みんなが私を天使だって言ってくれた。

それだけで私は、私の心ぐらいは、自由に空を飛べていた。心にはちゃんと翼があったのだ。

ところが最近、私の翼は切り落とされてしまった。

私のことをだれよりも愛でてくれている、兄の言葉によって。

兄は、私が好きだそうだ。

兄は高校の二年生だから、私とは五つも離れている。その兄が、私に「ずっと前から好きだった。愛してる」と言った。

ずっと、前から……?

それは、私が何歳からの話だろう。兄はロリコンなんだろうか。いいや、子供は嫌いなはずだ。それともシスコンなんだろうか。いいや、私と兄の間にはきょうだいがもうひとりいる。中学二年生の姉だ。兄からしたら妹になる。けれど兄は、姉には特別な想いもないと言う。

「僕が愛してるのはお前だけだよ」

と言った時の兄の目は、本気だった。小学校も卒業していない私にはまだ、愛を語れない。でも本気だった。それはわかった。

優しく語り聞かせるようだったけれど、反発や拒否は認めさせないものだった。

その時に、私の翼はなくなったのだ。