軍事大国アルミラには四人の王子がいるが、正妃には子がなく、四人の王子が四人とも別々の妾腹とくれば、互いに仲が良いはずもない。

王位継承権第一位は年長のキリシュだが、その他の三人にも、財産とか、家柄とか、なにがしらの切り札があり、派閥に分かれての王位争いは、当の王子たちの思惑と関わりなく、水面下で苛烈さを増していた。

広大な敷地に立つ王宮は、長大な渡り廊下で四つの離宮とつながっている。

これらの離宮は、妾妃と王位継承権を持つその子供のためにつくられたものだが、第四離宮で暮らすイリアの母親はすでになく、14歳の少年は、良かれ悪しかれこの離宮の唯一無二の当主だった。