二人の間に横たわる抜き身の剣。

「拾え」と言われて、ユーリはとまどった。

剣を拾うためには、崖から離れなくてはならない。

(ワナかも知れない)

浮かんだ思いを、心の中で否定した。

髪を切り、煤で顔を汚し、少年に身をやつした自分の正体が、一目で見抜けるはずがない。

よく見れば、剣の柄にはいくつもの宝石が埋め込まれ、精緻な彫刻が施されていた。

それでいて、単なる飾り物ではないことは、研ぎ澄まされた刀身が放つ、冴えた輝きから見てとれた。