ケータイ小説 野いちご

桜の下で ~幕末純愛~


―慶応二年―

桜夜も新撰組の隊士達も新年を祝っていた。

市内巡察は変わらずに行われるものの他の隊士達は朝から呑み通しだった。

うぇ~っ。馴れないもんだね、私も。

広間の酒臭さに酔った桜夜は縁側に座った。

そんな桜夜を土方が見つける。

このところ土方は内心穏やかではなかった。

急に桜夜が“子供”から“女”に変わってきたのが手に取るように分かった。

―嫉妬…か……―

「また呑んでもねぇのに酔ったのか。進歩しねぇな」

ククッと笑いながら土方は桜夜に近付いた。

ひじぃ…。あれ?今日は広間に居なかったよね?

「年末の大掃除やらでクタクタなのに…皆、よく飲めますね。土方さんは?広間には居ませんでしたよね?」

「おめぇも呑んでみりゃいいじゃねぇか」

質問に答えてないし…。それに私は未成年だからムリでしょ。

「遠慮しときます。総司にバレたら殺されそうだし」

すると土方がニヤリと笑う。

何か企んでそうな笑い方…。

「じゃあ、総司に知られなきゃいいんだな」

はい?そういう問題ではありせんが?

土方はヒョイと桜夜をつまみあげた。

「ちょっ、ちょっと。何するんですかっ」

「うるせぇな」

そのまま桜夜を担ぎ上げるとスタスタと歩き出す。

「ひ…土方さん?酔ってます?」

土方からは相変わらずの煙管の匂いしかしない。

「あ゛?んな事ぁどうでもいいだろ」

よくないっす~。

桜夜は土方の肩あたりでジタバタする。

「暴れんじゃねぇよ、猿。襲うぞ」

桜夜の動きがピタっと止まった。

襲うって…。ひじぃ、今日はおかしいよ。

そ~じぃ~。助けて~。

そうこうしているうちに土方の部屋に着く。

土方は桜夜を下ろした。

「どうしたんですか?」

桜夜がため息混じりに聞く。

土方はふいに冷静になった。

―やっちまった。らしくねぇな―

「…悪かったな。ふざけ過ぎた」

土方は桜夜をそのまま部屋の外へ出した。

暫くすると桜夜の声がした。

「土方さん、入りますよ」

―稲葉?―

返事を待たずに桜夜は襖を開けた。

「てめぇは…」

そこにはお酒を持った桜夜が居た。

「お酌くらいはしてあげますよ。総司には内緒ですからねっ」

桜夜は土方の部屋に入った。

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