「今日も気を付けるのよ?」


腰に手をあて、依子が声をはる。
でも、返事がない。




「りん?」




「…へ?」




依子は気がなく振り返った私を見て、ふうっとため息をついた。




そして一緒にまた門まで行き、手を振る翼を見つけた。

依子も手を振り返し、私を見る。




「じゃあ…」




私が依子のほうに手をあげようとしたとき、依子はそのまま翼のほうへ走って行った。



ポカーンとそっちを見ていると、依子が勢いよく振り返った。
そして、口に片手を添える。






「りんー!私はねえ!『元気だして』なんて、言わないからね!」



「えっ!?よ、依…」





「めっちゃ悩めばいい!私…りんが自分から笑ってくれるの、待ってるから!」



それだけ叫んで、依子はしてやったり顔で、遠くで待ってた翼のほうに走って行った。




「…恥ずかしいんだから、もう」






少し上を向く。

涙腺、緩くなったな、とぼそっとつぶやいて。