穏やかな時間が、
終わった事を知った。


無線を通して、
扉の向こうの二人の会話が
聞こえていて・・・

全力疾走して、切れそうな咽と
息を整えながら、
ゴウに残された、
最後の時間を見守っていた。


モニカが、
ゴウを思い出した事にも、
驚愕したが。


あの、少年兵が、
彼女を愛していた事にも、
ショックを受けた。


キムから、聞いている話では、
奴らのいた部隊は、
生活環境も生存競争も
厳しかった様だ。

幼くして、過酷な状況に、
身を置くしかなかった彼らが、
人を愛する感情を、
どこで学んだというのだろう?


事実、モニカは
知らなかった。

その感情も、
処理の仕方も、
表現すらも・・・。

懐かしい日々に、
想いが向いてしまう。


あの日に、帰れない事を、
自分が、一番、それを、
理解している。

なのに、モニカを傍に置くと、
抑え切れない何かが、
動き出す。


そんな意識を、
現実の、この空間に、
繋ぎとめてくれるのは、
無線から聞こえる、
間隔が、狭まりつつある
獣の吠声だった。


『ウッ!!』

モニカの苦しげな声がした。