ムーンと別れ、私は、
あの狂気の城へ、
足を踏み入れた。

尋常じゃない臭気が、
館全体を覆う。

門番の男に、
ムーンに渡されたIDをみせ、
顎で入る様指図をされ、
従う。

「次のオンナか?
エロい身体してんなあ。」

上から下まで、往復で、
なめ回すように、見ながら、
鼻で笑いやがる。

バカが。
エロい顔して笑うな。
低脳男。

シラけた眼差しを送ると、
奴らは肩をすくめて、
せいぜい飽きられない様にな、
と、吐いた。

誰が、自分を
キズモノにした男となんか、
寝る?

寝言は、休み休みに
してほしい。

腹の底で、全てを嘲笑しながら
重厚な扉をあけた。

前回の記憶が蘇り、
吐き気をもよおしながらも、
ムーンに、教えられたとおり
扉を開け進む。


あと、二枚の扉


ノブに、手をのばすと、
数名のつんざくような悲鳴が、
脳裏で共鳴し、ひざが崩れた。

「くっ・・・」

立ち上がろうと、
絨毯に手をつく。


・・・・

血の匂いがする。

視線だけで、辺りをさぐる。


・・・。

左側に隠し扉を見つけた。


そこに何かいる。
そう直感した。