「そのジュース初めてみる」


「へ?」


翌日の昼休み、教室で友達の静(シズカ)と菜々(ナナ)と3人でテーブルを囲んでいたら、

静が言いだした。


静はバレー部所属の背の高い細身の女の子で、ショートヘアがよく似合ってる。


ご飯をがっつり口の中に詰めながらしゃべるあたりが彼女らしい。


「そのジュースって、これ?」


パンを食べながら――吸血鬼だって人と同じものを食べることもできるのだ――飲んでるパックジュースを持ち上げて、訊いてみる。


「うん、そう、そのトマトジュース。トマトジュースなんて飲まないからかもだけど、見覚えないなぁって思って」


「ホントだ。見たことないような……? でも、トマトジュースを飲んでる人自体、珍しい気がするけど」


菜々も言う。


菜々は背が低くて、肩まで伸ばした髪の毛をハーフアップにしている。


赤い太淵のメガネが可愛い。


「そう? あたし、トマトジュース好きなの」


にっこり笑って言いながらも、内心は心臓がバックバク緊張していた。