それから数日後のある日、外出から捜査一課室に戻ると、上司の岸警部に呼ばれた。

「日野、お前に来客だ」

「来客ですか?」

「奥の応接室に待たせてある」

そう促され、行ってみると、そこには1人の女性がいた。

青と白のストライプの清楚なブラウスに紺色のパンツ。

年齢はあたしと同じぐらいで、薄茶色の髪は染めているようだった。

「ひさしぶりね、麗美」

ひさしぶりと名前を呼ばれたからには、この女性はあたしの知ってる人間だろう。

しかし困ったことに、あたしの方は女性の顔も名前も、まったく思い出せなかった。

「わからない?」

彼女はあたしの表情を読み取った。

「あたしよ、淑恵」

「あ…!」

そう言われ、10年以上前の記憶がよみがえった。

淑恵は中学の時の同級生だった。

少し太めで、眼鏡をかけたおさげ髪の女の子。

内気で、笑顔を見せた事はあまりない。

自分の事を「あたし」ではなく「わたし」と呼ぶ子だった。