「ほら、見て見て!相沢先輩が歩いてるよ!」


次の日のお昼休み、智依が私の制服の裾をつまんで、中庭で女の子たちに囲まれながら歩く匠先輩の存在を教えてきた。


そりゃあ、先輩だって歩くでしょ…とは言えず、“本当だね…”と適当に相槌をうった。


「先輩カッコいいよねぇ…!眼鏡の奥に煌めく純粋な瞳。爽やかな笑顔。穏やかで優しくてまさに完璧だよね!」


興奮しながら話す智依には悪いけど、それは大きな間違いだよ…!


あれは絶対、作ってる…。

だって、あの部屋で見せる先輩の性格は、全然違うんだもん…。