目を覚ませば、隣に気持ちよさそうに眠る顔があった。


金色の髪は柔らかく、くしゅくしゅとしていて。

まるで子どものように眠る彼。


邪魔しないように身体を起こしてから、毛布を肩まで掛け直してやる。



窓を雨が叩いていた。

暖房器具も何もつけていない部屋のフローリングがつま先を冷やす。

身震いをしてからベッドの下に脱ぎ散らかされていた彼の白いシャツを手に取り、直接羽織った。



寂しい部屋。

何もないわけじゃない、寧ろ必要なものはすべてあったし、そのどれもが程度の良い美しいものだった。


ただ生活感がないだけ。



ドアを開ければリビング、ここも一緒。

なんでもある、だけど何もない。


アイランドキッチンに歩み寄り、コンロの上に置いてあったケトルに水を注ぐ。

立派なエスプレッソマシーンの横には、使いかけのインスタントコーヒーの瓶。

火にかけて、流し台の横に置いたままのマグカップを水でゆすぐ。



侘しい部屋に、ガスの音が静かに響いていた。


窓の外の雨を眺めながら、暫し立ち尽くす。

雨の向こうにはビルが並んでいるのだろうか。