空は青く透き通り、雲が優雅に頭上を過ぎていく。時刻は午後二時、一番暑い時間帯である。それに合わせてか、蝉はミンミンと大合唱をし、木々は緑の葉を伸び伸びと伸ばす。
 今、剛は、寝転がりながらそれを身体いっぱいに感じていた。

(こうしていると、田舎に生まれた事を心から幸せに感じるな・・・)

 ここは、五玖真寺の所有の森。剛は集合時間よりも少しばかり早く着いてしまったので、集合時間になるまでここで時間つぶしをしているという訳である。

 こうして時間潰しをする事しばし、いつの間にか剛は眠りに落ちていた・・・
 紅い空、流れる雲、山と山の間に見える日の光。そして、その光を受けて紅く色付くグラウンド・・・どうやら、ここは学校らしい。

(俺、どうして学校にいるんだ?)

 周りを見回そうとするが、視界は固定されていて、それ以外の景色は見ることが出来ない。

(これは・・・夢?)

 剛は何だか不思議な感情に囚われた。今まで、彼が経験してきた夢は、現実とは思いはしなかったものの、自分が夢を見ているという自覚が生まれた事がなかったのだ。
その間も夢の世界の時間は進んでいく。

 いつの間にか、グラウンドに、一つの人影が現れた。それは、ゆらりゆらりと動くと、その場に座り込み、虚空に向かって何か呟き出した。

『・・・・は間違ってないんだ・・・悪いのは・・・・なんだから。そうだよね?・・・・』

(この声、何処かで・・・)

 必死に考えるものの、なかなか思い出せない。

(何処かで・・・いつも聞いてるはずなんだけど・・)

 そうしている間に、もう一つ影が現れる。大きさは、先程の半分程度、子供の物のようにも見える。
 その人影は、座り込んでいる人影に近付いていく。

『・・・。私・・・・』

 人影が近付くと、その子供程の人影は、ひたりと立ち止まり、何か囁く。

『・・・・』