けれど、沙依はある事がひっかかっていた。


それは

『春美は渡部先生が好き』ということ。








学級のみならず、学年に知れ渡っていたし、他学年の生徒にも多少知られていた。



だから『春美は渡部先生でも伊能先生でもどちらでも良かった』という考えが出て来ないはずがなかった。



たとえ、どちらかが本気であったとしても、こんな曖昧な思いでいる春美に負ける気がしなかった。


























だからか、春美はすぐに身を引いた。
勝てると信じていた春美の目には涙はなかった。