「嘘つき・・・」
ユミは泣いていた。
昨日の夜、ユミは新宿を歩いていた。
中学時代からの同級生達との飲み会の帰り、突然目の前に信じられない光景が飛び込んでくる。
目を疑った、何度も見直した。
酔いのせいではなかった、その場にいた親友のカオリも立ち尽くすしかなかった。
「ヒロ・・・」
呼ぼうとして、すぐに止めた。
どうしても声が出てこなかった。
もしその名を呼んでしまったら、すべてが壊れてしまう。
そんな気がして。
「ねえ、行こう」
小さくつぶやくカオリにうながされて、ゆっくりと歩みを進めはじめた。
時間にすればほんの数秒の出来事。
でも、ユミにとっては何時間にも感じられた。
まだ頭の中を整理出来ない。
ひとり、何度も何度もつぶやいた。
「嘘つき・・・」
誰もそれに答えてくれる者はいなかった。
一夜明けて、セミの声が響きはじめる頃、まだユミは眠れずにうずくまっていた。
夢であってほしい。
昨日の酔いも影響しているからか、視界はぼやけていた。
突然鳴り響いた携帯電話に目を落とす。
「ヒロキ」からの着信だった。
取ろうと手を伸ばして、またすぐに止めた。
二度目の着信を聞いたのは、お昼過ぎだった。
メールで一言、「どうした?」だった。
相変わらずの愛想のないメールに、余計に頭が痛くなる。
「どうした?」じゃない。
聞きたいのはこっちだ、昨日のあれは何なのか。
一緒にいた女性に見覚えはなかった。
それがまだ救いだった。
少なくとも知り合いの裏切りではないと分かったから。
きっと、こんな悩みも今だけ。
ちゃんと聞けたなら、それも今すぐに消えるのかもしれない。
でも、聞けない。
聞けばきっと後悔する。
知りたい、でも知りたくない。
どうしようもないジレンマに悩まされながら、いつしか眠りに落ちていた。
ユミは泣いていた。
昨日の夜、ユミは新宿を歩いていた。
中学時代からの同級生達との飲み会の帰り、突然目の前に信じられない光景が飛び込んでくる。
目を疑った、何度も見直した。
酔いのせいではなかった、その場にいた親友のカオリも立ち尽くすしかなかった。
「ヒロ・・・」
呼ぼうとして、すぐに止めた。
どうしても声が出てこなかった。
もしその名を呼んでしまったら、すべてが壊れてしまう。
そんな気がして。
「ねえ、行こう」
小さくつぶやくカオリにうながされて、ゆっくりと歩みを進めはじめた。
時間にすればほんの数秒の出来事。
でも、ユミにとっては何時間にも感じられた。
まだ頭の中を整理出来ない。
ひとり、何度も何度もつぶやいた。
「嘘つき・・・」
誰もそれに答えてくれる者はいなかった。
一夜明けて、セミの声が響きはじめる頃、まだユミは眠れずにうずくまっていた。
夢であってほしい。
昨日の酔いも影響しているからか、視界はぼやけていた。
突然鳴り響いた携帯電話に目を落とす。
「ヒロキ」からの着信だった。
取ろうと手を伸ばして、またすぐに止めた。
二度目の着信を聞いたのは、お昼過ぎだった。
メールで一言、「どうした?」だった。
相変わらずの愛想のないメールに、余計に頭が痛くなる。
「どうした?」じゃない。
聞きたいのはこっちだ、昨日のあれは何なのか。
一緒にいた女性に見覚えはなかった。
それがまだ救いだった。
少なくとも知り合いの裏切りではないと分かったから。
きっと、こんな悩みも今だけ。
ちゃんと聞けたなら、それも今すぐに消えるのかもしれない。
でも、聞けない。
聞けばきっと後悔する。
知りたい、でも知りたくない。
どうしようもないジレンマに悩まされながら、いつしか眠りに落ちていた。