アッパータウンの閑静なアパート地区にケビンの部屋はあった。

1920年代の古いビルであるにもかかわらず、パパラッチも入れないように駐車場の入り口は全自動の工夫がされており、中のセキュリティーシステムは完璧だった。

そこの12階、小さいながらもニューヨークが一望できるテラスがあり、むき出しのブロックの壁とマルランガのソファが、スタイリッシュな今をときめく俳優の部屋をシンプルに飾り立てていた。

ケビンは車の中で眠ってしまった彼女を部屋まで抱きかかえ、そっとベッドに横たえた。

それからじっと彼女の顔を見つめた。

心のそ底から彼女に触れてみたかったが、千秋万感の想いでその手を引き戻した。

「さぁて、どうしたものか…。」

考えてみても何も思い浮かばなかった。

自分が彼女をつれて帰ったことが犯罪なのかどうかも怪しい。

その夜、枕を抱えてソファで眠った。