水の中でもがくルイの意識が遠のいていく。

そこにはいとしい人の姿が瞳を閉じたまま、じっとこちらを向いている。

昨夜あれほど愛し合って、やさしくキスしてくれたあの唇にはもう色がない。

突然、腕の紐が緩んだ。右手の小指を無理やり抜き、その反動で小指は真後ろに折れてしまったようだったが、そのまま腕を抜き取ることができた。

不思議と痛みは感じなかった。

それに続いて左手もゆるんだ紐から抜けたので、やっとの思いで水上へ上がり、呼吸した。

何度か息を吸ってから、もう一度亮介のところへ戻ってみるが、もうルイには彼を見つけることができなかった。

必死でタグボートの方へ泳いで行き、ボートに登り込み、そのままふらふらと埠頭を街へとさまよい歩き出した。

夜風が濡れたルイの体を冷たく刺した。

何度も行きかう車を見たが、もう夜中の一時にもなり、どの車も不気味がって止まらなかった。

ルイ自身も助けを呼ぶようなそぶりすらしなかったが、ただぬれねずみの素っ裸のまま、ふらふらと歩き続け、大通りに出る手前の路地の倉庫前で力尽きた。

そのまま倒れこんで、ガタガタと震えだし、足をかかえて動かなくなった。