「シアちゃんって云うんだ?」
「・・はい。」
「付き人でね?
イイコはいないかって
相談してたんだ。
彼の顔を立てると思って
OKしてくんないかな?
・・ねえ? 坂巻さん。」
「・・・!」
同意を求めて
ヤツに首を傾けて笑う。
このコの前じゃ反論できまい。
・・ふふ、ナンだよ今更?
いろいろと顔色変えて
忙しいな、アンタも。
彼女は気付かない目線で
ヤツを見下ろしている。
「そういう事なら・・。」
"困らせたくない"
そんな
気持ちからだったのだろう。
視線を落として頷いた。
ヤツにとっては
都合のいい女なのかもしれない。
それが解っているかに・・
寂しそうなほんの少しの笑み。
こんなコを胸糞悪い、
こんなクズみたいな男が
好きにしてる。
( 何が良くて
一緒に居るんだ? )
俺は
そう考えれるまでの
冷静さとペースを取り戻した。
だが・・まだ、これからだ。
「じゃ・・先に、待ってて。」
「え、あの、用意を」
「何にも要らない、大丈夫。」
ドアの直ぐ傍で待っていた
屈強な警備に彼女を任せる。
ドアを閉めた俺の背に
口火を切ったのは彼だった。
「一月分の料金になるけど?」
単刀直入だな・・金づるか?
まるでヒモだ。
アンタはどこまで腐った
ミュージシャンなんだよ?
「要らないって
云ってたでしょ・・?」
だが俺も引き下がれない。
何時の間にか芽生えた、
妙な正義感のせいだった。
彼女をこの外道から
引き離してやるのが
先決だと思ったんだ・・。
「・・悪いケド、
彼女には他にもまだ契約が
残ってるんだ。」
まったく、どっちが
付き人なんだか解りゃしない。
誰と
どんな契約をしやがった?
「 マケとくよ。100でどう?」
目的次第で
金額は変わるだろう。
付き人1人にしちゃ高い。
彼の提示した金額は
間違いなく、
シアを"売春婦"扱いしていた。