「・・・借金を?」

「うん、何・・、君だったら
坂巻の金の使い道を知ってる
んじゃないかなぁって。」


事務所に戻ったその当日・・

社長はジュードのいない隙を
見てたまたま休憩室にいた
私にそんな事を訊ねるのだ。

時期的には・・合ってる。
知らないことはなかった。


「ギャンブルには興味
なかったようですけど・・。」

「治療費だって聞いたわよ?」



やはりそうか、
社長は知っていて聞いている。

調べたに違いない・・。

それにしても、坂巻がそんな
お金を支払っていただなんて。



「え・・?
彼はその条件で私を・・!?」

「ウチとしては君を移籍させ
れば文句ないし、安心して
ジュードも任せられるし?
で・・まあ、いいかと。」


私をココに引き渡す事で
借金チャラ? 
社長のあの"お手上げ"ポーズは
そう云う事なんだ・・。

やはり、ジュードの諭す通り彼、
坂巻は私が思っている
様な男ではなかった・・?

もう涙も出やしない・・。
私を借金のカタにするなんて。

私はアイスココアの缶を
額に当て、
冷静でいられる様に努めた。

社長は更に追い討ちを掛ける。


「付き人、続けたいでしょ?」


そこまでバカじゃないから
解ってる。
私は坂巻が雇った、
ただのバイトにすぎないのだ。

カタになり得ない。

だが、社長が云わんと
している事は解る。

"誰の為に、
彼が人を殴ったか"

つまり、私は
そのツケを坂巻から
請求されたも同然なのだ。

呆然ともなる・・
彼がそんな男だったとは。


( 貴方はその為に・・
手を差し伸べたの?)


「・・ええ。」

「だったら・・・、」


カチャッ。


ジュードがチリドッグの
入った袋を手に戻ってきた。

外から社長の声は
聞こえていたらしく
別に驚きはしていない。


「・・・何の話?」