あるところに緑の少年と青の少年がいました。


「お前俺にさ、そのパンくれない?」
「どうして?」
「俺んち貧乏でさ、買えねえから」


緑の少年は確かに貧乏でしたが、青の少年もまた貧乏でした。


「そうなんだ、いいよ」


青の少年は快くパンをあげました。またある日。


「お前俺にさ、その果物くれない?」
「どうして?」
「俺んち今、母さんが病気だから」
「そうなんだ」


緑の少年の母親は確かに病気でしたが、青の少年の母親もまた病気でした。


「いいよ」


青の少年は快く果物をあげました。パンから果物へ、果物から家畜へ、家畜から畑へ、次々と緑の少年に快くあげていた青の少年は、いつしかあげるものがなくなってしまいました。


「お前俺にさ、お前の体くれない?」
「どうして?」
「だってお前何もないじゃん。生きてる価値あんの」


青の少年は考えました。母親も亡くなり、食べ物も畑もお金もない。もう青の少年は、生きてはいけないのです。


「いいよ」


青の少年は笑って、緑の少年に自分をあげました。その晩、緑の少年の家では、豪華なステーキが食卓を彩ったそうです。

そんな、素直で無知な少年二人の話。



3,無知な少年【エンド】