『おはよう、カオリ』
「おはよう」
『今日もよい一日を』
「ええ」


いつもの如く鳴った電話からは、いつもの如く彼の声。
いつもの如く応え、いつもの如く起き上がった。
よく晴れてるなあと窓を眺めながら、コーヒーメーカーに一人分をセットする。
コポコポと緩い音を立てながら落ちていく琥珀色に小さく溜め息を零した。


「おはよう」
「おはよう」


いつもの如く出社して、いつもの如くデスクに座る。
欠伸を噛み締めるわたしに、同期の菜々子が声を掛けてきた。


「最近眠そうね」
「んーまあね」
「やっぱりアレの所為?」
「んー……」


曖昧に頷いて、デスクに置いた携帯を眺める。
いつからそれが日常になったのだろうか。


「番号変えたら?」
「何回も変えたんだよ」


それでも続くそれは、気付けば日常と化していて、毎朝のそれは、いつもの如くで片付くものとなっていた。


「何にもなければいいけどね……」


いつもの如く繰り返される菜々子との会話。
モーニングコールの顔も知らないどこかの誰か。


「本当にね」


これ以上、可笑しな日常になるのは御免だと思った。



7,グッドモーニングコール
【エンド】