洞窟をウッドとしばらく歩き続けた。

湖から離れているせいか、暗く感じる。

見えないほどではないんだけどな。

「ウッドの村って、どんな場所なんだ?」

「自然の中にあり作物が豊富、村の者、とても優しい」

日本で言う農村を想像すればいいのだろうか。

自分の世界を語るウッドは、嬉しそうに見えた。

「俺は一度も村みたいな場所に行った事がないんだけどよ、ウッドが褒めるなら、良い場所なんだろうな」

「心地のいい場所。俺、好きだ」

自分の住むべき世界を好きだと言えるウッドは、幸せなんだろう。

村に近づいているからか、今は侵略してきた人間を憎む素振りは見せない。

俺からすれば、他人事だ。

だが、人間という種族を恨まれると胸が痛む。

俺には人間の血が流れているから嫌なんだ。

でも、あって当然の感情で、文句が言えない。

だって、人間が悪いんだ。

容赦なく人の物を奪い続けようとする人間こそが、悪なんだ。

何故決め付けるかだって?

交渉もなしに占領するのは、村人からすれば『悪』以外に何があるんだ?

自分達が正義だと言ったところで、正当とは言えない。

だからといって、俺を殺して憎むのは終わりにしてくれとは言えない。

何の解決にもならないからである。

日本に居た頃よりも、種族の争いがない平和を望む気持ちが強くなっていた。

日の明かりと共に出口が見えてくる。

洞窟の出口付近は地下から地上へと気持ち斜面になっている。

「着いたのか」

出口から外は森に覆われており、適当に歩けば迷いそうだ。

洞窟の入り口には鉄の門が左右についており、今は開いて交通出来るようだ。

「村まで、あと少し」

「そうか」

俺の目的は日本に帰ることであって、村で過ごすためではない。

帰る手段を聞けば、村に厄介事を招かないように素早く去ろう。

だが、俺が来た時点で厄介事を持ち込んだと言っても、過言ではないのだがな。