私は闇の中の道を走っている。

今日を生きるためには、逃げなければならない。

「はあ、はあ、はあ」

走る足には自信があった。

でも、逃げ切ることなんて出来ない。

「はあ、はあ、はあ」

息が切れて、立ち止まれば囲まれる。

誰も助けてくれない。

誰もが自分のことしか見てないんだ。

家族なんて偽者、恋人や子供なんて自分のために利用するもの。

解っていたのに私は信じてしまった。

家族という絵空事でしかないものに騙されて廃墟へと追いやられた。

「待て、コラ!人様の物パクっといてタダでおられると思ってるのか!」

「はあ、はあ、はあ、地面に落ちていた。落ちていたってことはあなたの物じゃない」

私は、落ちていた鞄を拾っただけだ。

「屁理屈ぬかすな!この、ガキ!」

足に力が入らない。

追手は大人だから、体力や筋力が上回るのを忘れてた。

「いた!」

走ろうとし始めたら、大きい壁にぶつかる。

後方ばかりに注意がいってせいで、前方に何があるのか確認するのも忘れてた。

「へへへ、それ、オレのん」

目前には後ろの追手よりも筋肉のついた大男がいる。

「ガフ!」

私の顔くらいある拳を顔面に叩きつけ、荷物を手放しながら後方へぶっ飛ばされる。

大男は荷物を持って、満足気に去っていく。

「俺が必死で手に入れたモノ、簡単に横取りされやがって!どうしてくれるんだ!」

後から来た追手に汚れた服の襟を掴まれると、容赦なく殴ってくる。

意識がどこかへと飛んでいきそうになった。