あれから、数日が経ちました。

お医者さんは、私の傷の治りが早いと驚くばかりです。

しかし、入院は余儀なくされましたよ。

私自身は病院独特の匂いは嫌いではないので、ずっと居座ってもいいくらいです。

そして、病院食の味の薄さは現代食になければならないほど、大切な物だといえますね。

現代の若者達に是非ともオススメしたいところです。

今日も病院のベッドに横たわって、パジャマ姿でナイフを磨いています。

「パパー!」

毎日お見舞いに来てくれる摩耶さんの手には、紙で織り成される千羽の鶴が舞っていますよ。

「ウチな、千羽鶴折ってきてん!」

「おや、とても美的センスに溢れた鶴ですね。摩耶さんの熱情を感じてしまいますよ」

「パパのためなら、こんなん屁でもないねんで」

摩耶さんの言葉には、心に居座らせて仕舞いそうなほどの癒しがあります。

「ウチを助けてくれたんやもん!やっぱ、パパはウチのパパやわ!」

実際は死地に辿り着くために向ったものですが、結果的には摩耶さんを助けることとなりましたね。

摩耶さんには大脱出を行って欲しかったのですが、葵さんのナイフ捌きを見ることが出来たので満足しましたよ。

後ろから、ジーンズと赤い七分丈のシャツ姿の葵さんが病室へと入ってきます。

「おや、私とお喋りしにきてくれたんですか?」

「私も千羽鶴を折ったんで、鶴の行方が気になっただけです」

「ちなみに、葵が折ったのはこれや」

摩耶さんが指差したのは、芸術のような鶴です。

翼があさっての方向を向いて、飛び立つ事を嫌っていそうですね。

「恩師、摩耶さんに教えてもらったので、挑戦してみました。外道にはちょっともったいない鶴になりましたけどね」

「あなたの熱意の篭った姿勢に、鶴も生を受けて喜んでいますよ」

「外道の危険性に鶴も震え上がるばかりです」

葵さんは自分の作った鶴を指で突付いて、可愛がっているようです。

摩耶さんは窓辺に千羽鶴を飾って、椅子に座りました。