診療所内にルイゼがもどってみると、リリルが両手を広げてあきれた顔をしていた。

「みんな無事なんだな。」


「ええ。地震もおさまったし、化け物もいない。死人やけが人も増えてないわ。」


「そうか・・・。」


「ところで、千代はどうなったの?いっしょじゃなかったの?」


「千代は・・・扉を開けたよ。扉の向こうへ行ってしまった。
すばらしかったよ。俺が教えた呪文など対抗できるわけがないすばらしい呪文を唱えて旅立った。
世界を守る未知な呪文は愛する者たちの名前が入ってこそ使用できる呪文だった。
だから蔵書にはないんだ。
それを見せてもらえた俺は幸せものだ。

たとえ、ほとんど魔力がなくなっても感謝する。」


「魔力がなくなったって・・・・!? あっ!!!」


リリルはいつも使っていた呪文を思い出せなくなっていた。

「あっちゃぁ~~~~」

「使えなくても、いい世界になったということなんだと思う。でもなぁ・・・魔法使いから魔法とったらどうしたらいいんだ?
ま、結界だの治癒魔法くらいならできるけど。」


「診療所で働けば?」

「そりゃいいねぇ。あはは・・・」


リリルとルイゼは診療所で働くことになりそうだ。


しかし・・・


「あら?ゼアがいないわ!あのナオにくっつきむしのごつい看護師がいない??」



オミとエルロは千代がいなくなって泣きまくっている。

「千代さんが犠牲にならなくったって・・・」

「いや、死んでないから。旅立ったってさっきいってたじゃん!」


いまひとつ活気がない診療所だったが、1日経った翌日は活気がよみがえっていた。


それは・・・

人々の記憶から千代やナオのことが落ち着いた神の力で消去されてしまったかららしい。