その頃、ルイゼとリリルは神の通り道とされる領域に潜んでいた。

「さすが、神様直属の魔法使いさんね。こんな異様な空気が流れている世界って初めてよ。」


「こういうときでもなければ、人間は連れて来ないんだけど、君なら細かいことにも気づいてくれそうだからさ・・・」


「まるで私のすべてを知っているかのように言うのね。まぁいいわ、それで私に何をさせたいの?」


「この世界を治めてる神、ニックネームをマリアというんだが・・・そのマリアの持ち物がないかを探してほしいんだ。」

「持ち物探しですって?」


「もちろん、ハンカチ探せとかいうんじゃない。メモを探してほしいんだ。」


「ここには見わたす限り、メモもゴミもないようなんだけど・・・。」

リリルは何が何だかわからない様子である。

すると、ルイゼは床に手をつっこんでメモ用紙を取り出した。
薄汚れたような灰色のメモ用紙にはメッセージが書いてある。



「もう時間がない。私は変わっていく。魔物を生み出す道具になどなりたくない。」


ルイゼは顔をしかめながら、「まずいな」とつぶやいた。


リリルはその様子を見て、同じように床の適当なところからルイゼがやったようにメモ用紙を取り出した。

「あったわ。え~と・・・狭間の世界はすべて整理することが必要だ。正規の世界に無事移動させることができたらいいのに。・・・私たちを移動しようとしてるのかしら?」


「やっぱり君はするどいな。この空間の秘密に気がついた?床に見えたり、壁に見えたりしているところは本物じゃない。
世界そのものがマリアが創り出した虚像なんだ。」


リリルは他に、5枚ほどメモを見つけると手を震わせてルイゼに告げた。


「千代にきてほしいらしいわ・・・。ナオを食べつくして早く来いってどういうこと?
マリアの心臓はナオって・・・何のこと?」


「なんだって!!そうか・・・マリアの思惑が少し読めたぞ。
世界消滅を避ける魔法が蔵書の中になかったわけが・・・そうか・・・」


リリルはもうわけがわからないという様子でルイゼを睨みつけていた。