リリルが去ってから、2週間が過ぎた。
2週間の間、千代は診療所の手伝いに出ない間は自室にこもることが多かった。


ナオは最初は、千代の体に神なるものが入る不安や、魔法のレベルアップなどが苦痛となっているのかと思って、だまって見守っていたのだが、さすがに、もう2週間もたつというのに、自分にも挨拶以外、話をしてくれない事態に心を痛めていた。


「なぁ、ゼア。千代ちゃん、どうして無口になっちゃったんだろう。」


「先生、昨日もその前も、同じ質問してますよ。そんなに心配なら、いい加減に直接きいてくださいよ。」


「それができれば、とっくにきいてるけどさ・・・いきなり泣かれちゃったら・・・とか思うと、ダメなんだ・・・。どうきりだしていいのか・・・ほんとに情けないよ。
保護者になるとか偉そうなこと言ってて、一度目をそらされただけで、なんか・・・こう・・・反抗期の娘相手に悩んでる親父みたいになっちゃって。」


「まぁ・・・そこまでの年でもないのに・・・。でも、困ったわねぇ。私もお年頃の女の子相手に悩みをきくなんて、やったことないわ。
いつも、あっちが先に、きいてきいて!って無理やりきかされてたことはあるけど。」


ふぅ・・・


「よし。しゃあない、ここは勇気を出さなきゃな。仕事終わったら、千代ちゃんに直接きいてみるか。」


夕方、ナオが仕事を早めに終え、千代の部屋を訪ねると返事がない。


ナオは驚いて、ドアをあけ、千代の部屋に入ると千代の姿はなく、机の上に「魔法書を読みに行ってきます。」とメモが置いてあった。


((あれほど、ひとりで出歩いちゃダメだって言ったのに。どうして・・・?))


ナオは慌てて、魔法書のある町はずれへ出かけた。