──青年は通話を済ませ、黒いワゴンに二人の仲間と共にベリルを抱えて乗り込みテキサス州に向かう。
暗いフィルムのかかった窓から荒野を見やり、隣で眠っているベリルの顔に指を滑らせた。
これまでの経歴を調べても、彼は優秀な傭兵であることは明らかだ。常に冷静で、仲間からの信頼も篤い。
そんな彼でも、やはり過去の出来事は心に大きな傷を残しているらしい。無表情ながらも、あのひと言で立ち上がった。
とはいえ、誰にも知られてはいけない事だから、動揺したのもあるだろう。
「僕たちは君を歓迎するよ」
愛でるようにつぶやき、微かに動いたベリルの指を見て青年は小さなケースを手に取り、その腕に二本目の麻酔を打った。